亡くなった父は鰻が好きで、近所にある老舗のうなぎ屋へよく通っていた。私も何度も連れて行ってくれたが子供に鰻の良さは分からず『外食のハズレ回』なんて思っていた。
私も大人になり鰻が良さも分かり、苦手だった奈良漬けも美味しいと思えるようになった。実家を建て替え子供が生まれた後、父の通っていた店へ自分が家族を連れて行くようになると「やっと俺も一人前になったな」なんて気分に耽った事もあった。
両親が亡くなって間もない頃のある日、うなぎ屋の女主人が私の家を訪ねてきた。香典返しを送っていたので、わざわざお礼に来てくれたのかな?と思いながら応対してみると・・・
「今度の選挙、XX党に投票をお願い出来るかしら?。お母さんは協力してくれたわよ」
丁重にお断りをした。そして、その店には行かなくなった。
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