バクラウ 地図から消された村

映画

2019 ブラジル 監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ、ジュリアーノ・ドルネレス ★4.5

あらすじ

近未来のブラジル北東部の村「バクラウ」にて長老が亡くなり、葬儀のために多くの村人が集まる。だがその直後から、奇妙な出来事が起こり始める。

感想

作業中のBGMのつもりに”ながら見”していたら「思ってたんと違うけど…なんか面白いぞコレ!」。いつの間にか夢中になって観ていた。初めて”フロム・ダスク・ティル・ドーン”を観た時の感覚に近い。ジャンク品の中からお宝を見つけたようなお得感を得られた。

これはナニ映画?

上記の予告を見ればバイオレンス・スリラー映画であろうかと予想できるが、予備知識は皆無で見たので、視聴途中で何度も「???」と混乱。ことごとく予想を外される展開が何度も続いて恐れ入った。

映画の冒頭、30代ぐらいに見える主演と思わしき女優が、葬儀のために久々に故郷の村に帰ってくる。村人の会話から窺える村内のイザコザや、牧歌的な葬儀シーンが続くので、てっきり「里帰り系のハート・ウォーミング・ドラマか…」と思っていた。ところが話は一変、怪しくなる。

いかにも貧しそうな村。そこへ訪れる傲慢な政治家。村のライフラインである給水車への襲撃。そしてインターネット上の存在抹消。次々と起こる不穏な出来事が続くので「これは虐げられた貧しい村人を描く、社会問題を提起した感動モノかな?」と、予想を軌道修正して見続ける。

そんな緊張感が高まったところに登場する謎の飛行物体。「え、UFO?」。予期せぬモノの登場に”フォー・ガットン”のようなトンデモ展開も予想。結局それは村人を監視しているドローンで、それを操る者の正体が分かると物語はバイオレンスな展開へ加速。

素人ハンター vs ガチンコ戦闘民族

村を襲っている集団の正体は、地元の利権絡みで村を丸ごと抹消したい政治家から依頼を請けたプロハンター。現代的な武器は充実しているが、メンバーは趣味で殺人を楽しむサバゲー好きのクズや、恐怖支配するタイプのサイコパスなリーダー。そんな連中ばかりなので、すぐにも内輪揉めしそうな脆弱ぶりで、サイコ・サスペンス的な雰囲気も醸し出してくる。

その一方、ハンターとは対象的な貧しいながらも団結力は強い村の人達。襲撃計画を察知した彼らは、どのように抵抗するのだろうとハラハラしていると、村人サイドに新たな人物達が登場。村の外れにある砦で何者と戦っているか不明の若者武装集団。パワー・バランスを崩しかねない最強格の全裸ネイチャー夫婦。

「この村は一体ナニ?」。村への本格的な襲撃計画が始まると、村人たちへの印象がガラリと変わる。怒りで本気になった村人は強過ぎて、過信もあったハンター・チームはすぐに瓦解して全滅。”武器や装備で劣るが、知恵と勇気で辛くも勝利をもぎ取る”ような、ありがちな展開はなく、戦闘においては圧倒的に強く賢く、むしろ過剰防衛気味にやり返す。黒幕の政治家の対しても暴力による制裁を加える。

不思議な映画

こんな結末だから、村側の勝利で終わってもスッキリはしない。今まで感じたことのない不思議な余韻に浸った。

なぜ村人がこんなに強いかの答えは作中で暗示されていて、この村は過去から幾度も虐げられ、そして戦い続けてきた歴史があるため、サイヤ人にも劣らない戦闘民族だったことが窺える。

圧倒的なバイオレンスを見せられたあとに、差別や貧富格差などもテーマ性も感じさせるので、ただのハチャメチャ映画ではなく奥深い作品になっており、作品の舞台であるブラジルの社会や歴史にも興味が湧いてきた。

コメント

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