バタフライ・エフェクト[タイムトラベル考察]

映画

★★★★☆ 2004 アメリカ 監督:エリック・ブレス 出演:アシュトン・カッチャー

あらすじ

主人公エヴァンは少年時代に時折、突然記憶を喪失する事があり、医師の勧めで日記をつけるようになる。大学生になったエヴァンは、ふと昔の日記を手にとると喪失していた記憶の時点にタイプリープしていた…。

感想

リアルタイムで劇場鑑賞した時は、とても良く出来たなタイムリープ作品だと感心して、その後にレンタルビデオでも見返した。少し前にドラゴン・ボール人造人間編を考察して以来、タイムトラベルを題材にした作品が気になり、本作を再確認してみた。

S F作品としては非常に面白く、タイムトラベルに付き物の矛盾点はあるが良く出来ている。しかし、ラブ・ストーリーとして見ると物足りなさがある。

「初恋の娘が可哀想だから救いたい」という割と青い動機でタイムリープを始めるが、暴力や虐待など刺激の強い事件と、繰り返すごとに事態が悪化する展開が続き、悲壮感が高くなる主人公。最後は「愛する彼女のために苦渋の選択をした!」みたいな壮大なラブ・ストーリーに変わり、OASISの曲で盛り上がる切なさ最高潮のエンディングに満足。

しかし、ふと冷静になると「大学生になるまでスッカリ忘れていた幼馴染のため、そこまでやるか?」と疑問に思ってしまった。気軽に使った能力のせいで自滅の道を進んだ主人公。そう思うと、別エンディングの過去に戻り自死する結果は救いようがない。

タイムトラベルのルール

  • 主人公は、父親からの遺伝により過去へ戻る特異能力を持つ。
  • 自分の日記を読み返すことで能力が発動する。
  • 過去へ戻る日時は、限定的だが指定できる(過去の記憶が喪失している時点へ移動可能)
  • 現在の精神・記憶を保有したまま、過去の自分の身体へ意識が憑依する。
  • 過去に戻ってから一定時間が経過すると、強制的に現在の身体へ意識が戻る。
  • 過去での行動によっては歴史が変わり、現在へ意識が戻ると周囲の環境が大きく変わっている(タイトルの”バタフライ効果”)。
  • 歴史が変わった場合、主人公は改変前と改変後の両世界の記憶を保有する。
  • 数年分の記憶量が増えるため、能力を使い過ぎると脳に負担が加わる。

いわゆる”タイムリープ”である。日記を使って発動する設定が面白い。

映画を観ている時は「記憶が欠落している時点に遡れる能力」と思っていたが、それは逆で、「未来の自分がタイムリープしてきた(=身体を乗っ取られた)から、その時の記憶(意識)が無い」のかもしれない。

時系列の整理

下の図に劇中の時系列をまとめた(現在どの配信サイトでも視聴できないため、ネット記事と記憶を頼りに書き起こしたので、誤りがあるかも)。

エディは劇中で合計10回のタイムリープをしている。そのうち過去を改変したのは5回で、赤い矢印で示している。それにより以前と異なる現在世界B〜Gが生まれた。過去改変していない(または現在へ影響のない程度の改変)タイムリープは、青い矢印で示している。劇場公開とは異なるディレクターズカットのエンディングはピンクで示した。

細かい矛盾点を挙げればキリがないが、私が大きく引っかかるポイントは2点。

1点目は、何度かのタイムリープで歴史改変されるが、元の世界Aで起きたイベント(記憶喪失箇所)だけは改変されないことだ。例えば、3度目のリープで地下室の事件を回避したB世界になっても、A世界で起きたダイナマイト爆破や愛犬が焼死した廃屋での事件は起きている。更に分岐したD世界になっても、地下室でのイベントは発生している。

「多生の歴史改変では影響されない強い因果を持つ重要イベントだった」とでも言えば説明がつくかもしれないが、もっと時系列をスマートにできたら良かったのに…と思ってしまった。

2点目は、世界Bでの刑務所内の協力者。信仰深い彼を協力させるために、過去へ戻り自分の手に傷を付けて、彼の目の前で聖痕を浮かび上がらせる。という場面がある。これはつまり、協力者の彼も歴史改変前の記憶(つい先程までは傷が無いこと)を保有していることになってしまう。これは説明はつかないので不必要なプロットだったと思ってしまった。

矛盾ではないが、もう1つ気になるのは幼少期に書いた「ナイフで人を殺す絵」。何かの布石になると思っていたら、上述の聖痕イベントに使われただけで、何故こんな絵を書いた理由は語られなかった。世界Bの刑務所内で主人公を暴行していた奴らを書いたようにも見えるが、そうすると過去改変する以前から世界Bの影響を受けていることになってしまう。編集途中でカットか変更したのだろうか?。

これ以上の粗探し考察は無粋になるので、ここまで。しかしながら、鑑賞中は特に矛盾には気が付かず、とても楽しめた作品だった。

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