★★★★★ 2025 アメリカ 監督:スコット・デリクソン 原作:ジョー・ヒル 出演:イーサン・ホーク、メイソン・テムズ、マデリーン・マックグロウ
あらすじ
前作から4年。連続殺人鬼グラバーによる監禁から生還したフィニーは、トラウマに苦しめられて荒んだ生活を過ごし、妹グウェンも母親から受け継いだ能力のせいで悪夢に苦しんでいた。そして前作で死んだはずのグラバーが亡霊として復活すると今度はグウェンを標的にして襲いかかってくる…。
感想
泣いた!。まさかホラー映画で涙するとは思わなかった。知人と映画の話題になると必ず本作を勧めている。
予告映像から「凡庸なスラッシャー映画に変わってしまうのでは…」と心配をしたが、とても良い続編だった。ホラー映画の続編としては最高の出来だと思う。1作目に思い入れがある人ならば、きっと満足するだろう。
本作はホラー映画のジャンルだが、核になるテーマは「家族愛」であり、主たる登場人物たちの行動も「家族愛」が動機になっている。妹グウェンは亡き母の足跡を辿り、兄フィンは妹を守るために奮闘し、前作で活躍の無かった父テレンスはも断酒を続けて子供達の危機には駆けつけた。自死したと思われていた母の死因も本作で解明され、この家族にとって救いとなった。私は、作中後半で父が除雪車で兄弟を迎えに来た直後の口論の末、フィンが感情を吐露する場面で泣いてしまった。そしてラストシーンの母からの電話で再び涙。この時のBGMのシンセサイザーの音も、とても心地よい。
フィン役のメイソン・テムズは、気になる俳優になった。前作では気の弱い少年のイメージだったが、細い体型を演技でカバーして逞しさを見せていた。大麻を吸って自暴自棄に耽る顔、グラバーと戦う決意をする顔、トラウマを吐露しながら涙する顔、どれもが迫真の演技で私の心を掴んだ。
グウェン役のマデリーン・マックグロウは、かなり雰囲気が変わっていたが、少し肩をすくめた立ち姿のシルエットを見るて「あぁ、やっぱり同じ子だな」と思った。本作では事実上の主人公は妹へ交代しており、彼女もしっかりとした演技を見せてくれた。
殺人鬼グラバー
前作では生きた人間の殺人鬼だったが、今作では死を超越した存在になって復活した。特徴的なマスク。湖のキャンプ場に現れる。夢の中で襲ってくる。など、ホラー界のレジェンドである”ジェイソン”と”フレディ”の特徴を臆面もなく取り入れて、派手にパワーアップした。その反面、前作のような何をするか分からない気味の悪さは失われてしまったが、新たなホラー・アイコンになれそうな存在になった。アメリカでは興行も成功しているようなので、再び登場しそうな予感。
作中では全く素顔が見えなかったがエンドロールを確認すると、今作もイーサン・ホークが演じていた。前作よりも楽しんで演じているようにも見えたが、イーサンである必要性が薄くなってしまったのは残念。
次回作はあるか?
前述のように興行的に大成功ならば、また続編が制作されそうな気がする。特にホラー映画ならば尚更だ。
フィン家族の物語は本作でキレイに畳んだので、出来れば彼らには再登場はしないで欲しいと願う。
それならば可能性がありそうなパターンは、殺人鬼グラバーが誕生するまでの前日譚を描く「ブラックフォン・ゼロ」あるいは「ビギニング」的なストーリーだろう。1作目でグラバー自身も「俺も黒電話が鳴ったの聞いたことがある」と言っていたので、ストーリーを膨らませる余地はいくらでもありそうだ。
もう1つ予想されるパターンは、グラバーは復活するがフィン家族とは関係ない者たちを襲う話も想像できるが、ただのキャラクター映画になってしまうので、あまり見たくはない。
また続きが見たいような…、蛇足は見たくないような…、そう思わせる良いシリーズ作である事に間違いはない。


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