年金と介護費用

両親はともに亡くなったが、父方の祖母が存命だ。大正生まれでもうすぐ100歳を迎えようとしているが、15年くらい前に認知症が進み老人ホームへ入居。昨年お見舞いに行った時は起きているけど話かけても反応しない状態だった。

両親が亡くなった事により長男である私が後見人になった。月額費用の支払いも私が負担・管理しているが、祖母の年金と公的補助金のおかげで少ない負担で済み、なんとか入居を続けられている状態。

私の両親は祖父から継いだお店の個人事業主だったが、国民年金を払っていなかった。「どうせ長生きなんかしないから」という父の考えからだったそうだ。父母の晩年にこの事実を聞いたとき、とても頭が痛い思いさせられた。

父が脳梗塞で倒れて店を畳むことになって両親の収入源は無くなった。「息子に迷惑をかけないように貯金でなんとか暮らしていく」と母は言っていたが、近い将来に貯金が底を着いたらどうやって面倒みようかと悩んだ。

具体的な貯金額は明かさなかったが、父の治療費や介護リフォームで1000万円位すぐに無くなったとも言っていたり、父の死後から母が時々お金の心配を口にするようになったので、私の不安は年々募るばかりだった。

母がガン告知されて終活を始めた時、初めて銀行口座を確認すると、残りは1年分の生活費程度しか残っていなかった。それから1年が経ち母の手術や診療費、葬儀費用などを引くと、銀行預金は殆ど残らなかったが、ギリギリながら「子供にお金の迷惑はかけたくない」という言葉を実行して母は逝った。

我が家の土地は借地であり、建物は私達夫婦の名義で住宅ローンを組んで建てたので、両親には他に資産と呼べるような物は無い。姉には残りの預金額など正直に伝えたところ、相続遺産は無いことに納得していた。もしも何かゴネたりしたら多少のお金を払って縁を切ってやろうかとも考えましたが、そのような事態にはならずに済んだ。

介護生活が続いたこの10年ほどは両親の老後生活費用の心配と恐怖が、かなりの心理的負担だった。近年では「年金制度は将来破綻する(あるいは既にしている)」という説もあるが、受給額が少なくても無いよりはマシなので、子どもの負担を軽くするために支払いはしておくべきと思う。

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