★★☆☆☆ 2014 アメリカ 監督:ディーン・イズラライト 出演:ジョニー・ウェストン、ソフィア・ブラック=デリア
あらすじ
MITに合格したが奨学金が足りずに苦悩する高校生デビッド。亡き父の作業場からタイムマシンの設計図を見つけ出して…。
感想
“タイムトラベル活劇”を期待したら、肩透かしを喰らった。青春パートが長過ぎて退屈な時間が多い。タイムマシンの製作から実験成功まで約40分を費やし、事件が起き始めるのは映画開始から75分ごろである。しかも、タイムトラベル映画の醍醐味である「拗れてしまった原因を解き明かして、それを解決する」というプロットは、ほとんど放棄しているので欲求不満に陥った。親友の話を聞かず、自己保身に走る主人公の姿も、かなり苛立たせる。
タイムトラベルのルール
- タイムマシンを使って時間移動する。
- タイムマシンは、父親が残した設計図をもとに主人公たちが製作した。
- タイムマシンのエネルギーには水素が必要だが、入手が難しい。
- 過去へ戻れるが、未来へ行けるかは不明。
- 移動先の日時指定が可能。製作当初は数日前までだったが、マシンの性能UPに伴い数年前まで可能になる。
- タイムマシンを操作すると現在へ戻って来れる。
- 過去の出来事を変えると、現在へ戻った時に周囲の環境や歴史が変わっている場合がある。
- タイムトラベルをした者が過去の自分と遭遇すると、肉体が消滅してしまう。機械や道具などの無生物は対象外の様子。
“Back to the Futer”を踏襲したような、オーソドックスな設定である。タイムトラベルのルールではないが「5人全員が揃わないと、タイムトラベルをしてはいけない」という内輪の約束がある。その約束を主人公が破ったことで事態は悪化していく。
時系列の整理
下の図に劇中の時系列をまとめた。

前半のタイムトラベルは、テストで合格、イジメの仕返し、大金ゲット、恋愛成就、思い出作り、など、私的な欲望を満たすために学生がやりそうな事を全てやる。その結果、歴史が変わってしまった事に主人公たちは映画後半で気が付く。
7回目以降は、主人公単独で時間移動を繰り返す。過去改変を試みるが上手く行かず、追い詰められた主人公は最後に、最も過去へ遡ってオールリセットを実行。設計図の破壊によりタイムマシンの無い未来へ歴史改変して、事件は一件落着。
この映画のパラドックスで最も気になる点は、エピローグ(2巡目の世界)でビデオカメラが2つ存在した事。元から有った父の残したカメラに加えて、デビッドが未来から持ち込んだカメラも見つかり、そのカメラには映画冒頭シーン(1巡目の世界)の記録が残されていた。その記録映像を参考にして、デビッドはジェシーに上手く話かけて幕を閉じる。映画のオチとしては面白いが、タイムマシンが製作されない未来になったハズなのに、なぜ未来から持ち込まれたカメラは残っているのか?。という問いが生まれる。
この映画におけるタイムトラベルのルールを振り返ると、辻褄が合う解釈は可能だ。過去に干渉して未来の事象を変えたとしても、それを実行した人間の記憶は残る。つまり、タイムトラベルしたモノにとっては改変前の事実が有ったことに変わりないのだから、共に持ち込まれたカメラに収められていた記録も残っている。
それでは何故、カメラは残ったのにデビッドは消滅したのか?。という疑問が浮かぶ。これはジェシーが過去の自分と遭遇して消滅した事象に重ねると、2つの解答が浮かんだ。1つ目は、デビッドも7歳の自分に遭遇した説。消滅直前のデビッドを録画しているカメラのフレーム外に、地下室へ降りてきた7歳のデビッドが現れて…。というのは想像が飛躍し過ぎだし、2巡目のデビッドは誰だよ?となってしまうので置いておく。
2つ目は、パラドクスが起きたから消滅した説。「もう一人の自分に遭遇すると消滅する理由は、パラドクスが発生したから」と仮定すれば「設計図を燃やしてパラドクスが発生させたから、デビッドは消えた」という解釈ができる。ビデオカメラが消えない理由は、機械のような無生物は対象外だからだ。なぜ無生物は対象外なのかと考察すれば「モノには改変する意思を持たないから」などの理由はデッチあげられるが、そういう物理法則の世界だから仕方ないのだ。(私は、その世界や設定なりのルールを用いて、矛盾の解答を探すのが好き)
矛盾点では無いが、タイムマシンのキーマンである父について、多くの謎が残った。デビッドは「タイムマシンを使って父の死を防ぎたい」と語っていたので、父の過去を辿るストーリーになると思いきや青春劇で終始し、父についての詳細は何も語られなかった。
- なぜタイムマシンを設計図を持っていたのか?(彼が発明したのか?)
- なぜ設計図を地下室に隠しておいたのか?
- いつ、なぜ、死んだのか?
続編製作を狙っていたか?。と疑うほど様々な疑問が未消化のまま終わった。もしもそうならば、父側視点の裏ストーリーが描かれると、きっと面白いだろう。それが2巡目の世界に繋がる理由になれば尚更だ。
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