ファンタスティック4:ファースト・ステップス

映画

2024 アメリカ 監督:マット・シャックマン 出演:ペドロ・パスカル、ヴァネッサ・カービー、ジョセフ・クイン、エボン・モス=バッチラックアデル・エグザルコプロス ★3.5

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あらすじ

別世界のアース828。ファンタスティック・フォーはヒーローとして4年ほど活動し、全人類から信頼と好意を寄せられる存在となっていた。リード夫妻にも待望の第一子がスーのお腹に授かることが出来た。そんな時、宇宙から突如として現れたシルバーサーファーにより、惑星を喰らいながら全宇宙を渡り歩く存在”ギャラクタス”が次の食事のターゲットを地球に決めたことが告げられた…。

感想

可もなく不可もなく、まぁまぁ楽しめる娯楽ヒーロー映画。

MCUシリーズ作品だが既存作品群とは別世界の設定なので、他作品の予習は不要で単体映画として楽しめる。複雑な人間関係や社会問題なども殆ど取り扱っていないので、ヒーロー映画の原点である”子供受けを狙った作品”と見ることもできる。劇中劇としてヒーローアニメが何度も登場することからも、「子供向けアニメをなるべく忠実に寄せて実写化した映画」と思える。それならば後述する矛盾やご都合主義な点についても溜飲が下がる。否定的な意見もあるがヒーロー映画に複雑さや奥深さ、伏線回収なんて無くて良いと私は思う。

レトロ・フューチャーな世界観

1960〜70年代風の世界観を背景に登場するオーバー・テクノロジーなツール。空飛ぶ車、宇宙ロケット、白と水色を基調にしたヒーロースーツ、発明品やガジェットなど、どれも50年前の絵本に登場したようなデザインとなっており、それらが懐かしさと新しさを備えた世界観を築き、「我々のいる世界とは少し異なった世界」を見事に魅せている。この美術センスが今作最大の魅力だろう。この点にも”アニメ世界の実写化“という拘りを強く感じる。

私が本作で最も気に入ったのは、サポートロボットのH.E.R.B.I.E。目のパーツが昔のテープリールになっているデザインが面白い。全体的な見た目も可愛くてマスコット的なキャラになり得るような存在だが、スーパーマンのバカ犬クリプトのように出しゃばらず、サポートに徹している点が良い。

ヒーロー誕生エピソードは省略

この前に観たばかりのスーパマンと同様に、リブート作である本作もヒーローになった経緯のエピソードは省略している。全くの初見でも置いていかれないように総集編的な説明映像はあるのだが、日本での知名度が低いヒーローなので説明不足感はあるし、「ファースト・ステップ」というサブ・タイトルにも違和感を覚える。

私は特にスーの能力がイマイチ理解できなかった。”透明化能力”と説明しているが、それを大きく上回るパワーと応用技を繰り出すので「何でもありのテレキネシス」にしか思えない。それよりも、あまり大したことないスピーチで、あっさり世論を説き伏せてしまう能力の方がスゴイと思った。

また、リードについては天才科学者としての役回りばかりで、特殊能力であるゴム人間の見せ場が非常に少ない。次作ではもっと身体を張ってマンガ・アニメのようなアクション・シーンを見せてもらいたい。

さらに言えば、肝心の本編ストーリーにおいては戦闘シーンやチーム連携プレイの見せ場は非常に少なく、見終わってみればダイジェスト版の中身の方が面白そうだったかも。

清く正しい主人公達

主人公4人は、みんな立派な人格者。まぁ特殊能力を身につける以前から宇宙飛行士になれるような人物なので当然と言えば当然なのだが、そのせいで登場キャラへの共感や親近感は生まれ難い。

スーは正に強くて美しい完璧な母。ジョニーはノリが軽くて少し無茶はするが、なんだかんだ頭脳派。ベンは見た目が岩男になってしまった悲劇は既に受け入れた心境になっており、悲哀を感じるが前向きになっているので心配しない。リードについては妻から「冷たい人間」と評される場面はあったものの、常識を逸脱する範囲ではない。映画序盤に描かれたリードの何やら不安そうな行動(仕事にかまけてベビーベッドを作らない)が後半の伏線になると思っていたら壮大に外れた。

“家族愛”も今作のテーマになっているように思えるが、我が子の扱いを巡ってリード夫婦の喧嘩があるものの基本的にチーム内に軋轢や葛藤は皆無でみな仲良し状態であるから、健全で表層的なモノにしか感じられないのが残念。そいうった苦悩は本作では省いた誕生譚で描かれるべきだあろうから、仕方ないのかもしれない。しかし、この点についても”アニメ世界の実写化“と思えば看過できる。

ヴィラン:ギャラクタス

私がわざわざ映画館へ足を運んだ動機は、ギャラクタスがどのように描かれるかを観たいからだ。全宇宙を脅かす凶悪な存在でありながら、まるで特殊スーツを着たオッサンのようなコミック然としたデザインのミスマッチ加減が気になっていた。

そんなギャラクタスの劇中での印象は、「とてつもなくデカいオッサン」の一言に尽きる。ハッキリ言って、怖くもなければ強そうにも見えない。むしろ絶妙に微笑ましい存在となっている。

まず、最初に登場した椅子に鎮座した彼の巨大な姿を見たとき、”魁!男塾の大豪院邪鬼”の初登場が脳内をよぎり、劇場で吹き出してしまった。

さらには、地球に到着してから海上へ降り立つ彼の姿が”プールへ飛び込むオッサン”に見えてしまい、またも失笑。なるべくビルを壊さずに市街地をゆっくり歩く彼の挙動を見て、凶悪なヴィランという印象を持つ客は誰も居ないだろうw。

どれくらいのデカさなのかと言えば、庵野ゴジラのように高層ビルと同じぐらい背丈。このような物理的スケールの敵に対しては、まともに戦っても勝てないから「地球ごと逃げる」「罠に嵌める」といった作戦を講じるのだが、それらが破られると案外シンプルな肉弾戦で抵抗。敵も敵で巨大な躯体で圧倒する以外に、これといった特殊能力を見せることもなく明らかに前述のゴジラより弱そう。おまけにゴム人間のリードを引き延ばして弄ぶ表情にはザコ臭がプンプンと漂う。

なんだかんだ結局、スーの命をかけた火事場の馬鹿力部下の裏切りによって押し切られて敗北したギャラクタス。拍子抜けはしたが、それで良い。それがアニメっぽいからだ。今作に登場した彼の印象は、下記リンクのLEGOアニメとそう変わらない。

矛盾とツッコミどころ

地球と引き換えに自分の子供が人質となった事を、聞かれてもいないのに全人類気へ発表してしまうリード。あっさりとF4に説得されて協力するチョロい人類。超天才科学者の設定なのにリードの考えた作戦がショボい。スーが死んだと思わせる展開だったが、次回作で登場するのが分かっているから緊迫感がない。

というレビューが散見され実際にその通りなのだが、ヒーロー映画(アニメ)にツッコミを入れること自体が野暮。しかしながら私がどうしても看過できない大きな点が1つある。

「臨月の妊婦をロケットに乗せて宇宙へ連れて行くな!」

出産後は我が子の危険を心配して人質に差し出すか作戦の囮にするかを夫婦で論争するのに、出産前には母体を危険に晒すリスクについて話し合いや苦悩も描かず、宇宙への出発を即時決行。近所にタクシー乗って出かけるんじゃないんだから…。主人公夫婦と同じくやっと子供を授かった私としては、このシナリオには全く理解できない。このトンデモ行為により、映画中盤ですっかり興醒めしてしまった。

次作へ

原作・アニメへの愛が強い人には絶賛かもしれないが、そうではない私には平凡な印象だった今作。”アベンジャーズ/ドゥームズデイ”にF4が参加することが明かされており、ポスクレ映像でも示されていた。ただの単独次回作ならば劇場で見ようとは思わないが、ドゥームズデイは追いかけようと思う。

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