★★★★☆ 公開:2001年 制作国:アメリカ合衆国 監督:トム・マクローリン 主な出演者:アンディ・ガルシア、ヴィンセント・カーシーザー、リンダ・カーデリーニ、サム・ボトムズ、テリ・ポロ
感想:条件付きでオススメしたい良作
イマイチな邦題なのだが、それが逆に気になって視聴してみると、なかなかの良作。
主人公が担当した患者が実はサイコパスで、次第に家族へ危険が迫る。そのような有触れたサスペンスと思いきや、後半で意外かつ衝撃的な事実が明かされると、重厚なドラマに変わる。
傷ついた登場人物たちの再生や希望も示されるので、最後は清々しい気持ちで視聴を終えた。
ドンデン返し系の映画としても他人にもススメたいが、家族での鑑賞は避けるべきだろう。その理由は後述に。
原題は「The Unsaid」
さて、この邦題だが「なぜ主演俳優名をタイトルに入れるのか?」という疑問が湧く。おそらく「沈黙の〜」というタイトルによるスティーブン・セガールの主演作との混同を避けるためだろうw。
原題の「Unsaid」は直訳すると「口(言葉)に出されていない」だ。文脈によっては「暗黙の了解」的な意味合いを持つ。このタイトルから登場人物のに「口にしていない秘密」があり、それがストーリーの鍵やテーマになる事が想像できる。
「沈黙の行方」という邦題は、意訳のニュアンスや物語の展開的にも沿っているが、もう少し良いタイトルが望ましかった。良い映画なだけに惜しい。
隠し続けた秘密とは…
【注意】完全ネタバレを含みます
登場人物の相関図を以下に示す。

息子を自殺で亡くしたマイケルが、保護観察中のトミーの診療をするストーリーなのだが、トミーの挙動がサイコパスそのものなので、てっきり彼が周到に隠している暴力的な本性が「秘密」であると思わされた。
しかし、本当の秘密とは2つの家庭で起きた”息子への性虐待”で、それを隠し続けていたのは双方ともに父親だった。これには、私もまんまとミスリードに釣られてしまった。
被害を受けたトミー自身は秘密を隠しているのではなく、「思い出したくない=封印しておきたい」と言うべき状態だろう。
マイケルの秘密
息子カイルはうつ病を苦に自殺したと思われたが、実はセラピストに性暴力を受けており、誰にも相談できずに死を選んだ。カイルの父宛の遺書によってマイケルはこの事実を知ったのだが、彼は元妻と娘には伝えていなかった。
なぜ隠したか?・・・マイケル本人は劇中で言及していないが、理由はいくつか考えられる。
- カイルのため。・・・カイルは性暴力被害者であることを、家族を含め多くの人に知られたくない。とマイケルが慮った。または遺書に書いてあった。
- 自分のため。・・・自分が選んだ親友であり同僚のセラピストによる性暴力だったので、家族にも言えなかった=妻と娘に責められたくなかった。
- 妻のため。・・・カイルがうつ病を患ったとき、マイケル以外のセラピストに診療させるように、元妻はマイケルに指示していた。そのため、この事実を元妻に伝えれば、彼女が自責の念に駆られるだろうと慮った。
- ハリーの家族のため。・・・性加害者であるハリーが拳銃自殺をした直後のカットで、彼の家族写真が写っている。可能性は低いが彼の妻と子供にも慮ったのかもしれない。
マイケルは良かれと思い家族にも秘密にしたのだろうが、結果的に家庭は崩壊したので、彼の選択は間違っていた。
ジョセフィーの秘密
母ダイアナが息子トミーへの性暴力(母子相姦)の現場を目撃したジョセフィーは、母親を衝動的に殺した。ジョセフィーは逮捕後や裁判の供述で「間男との浮気現場を目撃したため」と動機を偽証し、トミーへの性暴力は隠していた。
なぜ隠したか?・・・ジョセフィーも劇中で言及していないが、真実を明かせばセンセーショナルな事件になる事を予想し、世間からの好奇の目からトミーを守るため。と推察する。
ジョセフィーもトミーのためを思い事実を隠したが、結果的にトミーは殺人犯になってしまった。トミーの後見人たちが真実を知っていれば、もっと早く彼を正しく治療・矯正できたかもしれない。ジョセフィーの選択も間違っていた。
マイケルはダイアナ殺しの真相を見抜いていた
父親2人の選択は間違っていた。その結果(=沈黙の行方)が劇中のストーリーにつながる。そして、その2人がお互いに真実を話すことによって、物語は解決に向かう。
面会の場でマイケルが自分の過去の秘密を打ち明けたことで、ジョセフィーに信用と共感を与えて心を動かした結果、殺人動機の真相を聞き出せた。
なぜマイケルは、ジョセフィーに自分の話をしたのだろうか?。
マイケルは面会前からダイアナ殺しの真相に薄々気が付いていたのだろう。それは「一流のセラピストとしての洞察力」と「復讐に駆り立てられた者同士の共通点」からだ。
2人の共通点は、息子が性暴力の被害にあった事だけではない。その加害者を殺そうとした事もだ。ジョセフィーは妻を殺した。一方、マイケルは同僚ハリーを殺しに彼の家に訪れたが、手を下す前にハリーは自殺した。
マイケル「私とあなたの違いは何だと?、理性や良心じゃない、運だ、ただの偶然だよ。」
このセリフは、結果は紙一重で違ったが息子の復讐に駆り立てられて行動した点は同じだ。と言っているようなもので、真相を察知していなければこの言葉は出てないだろう。
マイケルの推察と計画は的中し、ジョセフィーの言質を取ることに成功した。
そして、マイケルの告白は懺悔のような効果も生み彼自身の再生にも繋がった。
無料公開中
この記事を書いている時点では、YouTubeで本作を無料視聴できる!。
興味があれば、ご視聴どうぞ。


コメント