【図解】TENET|オペラハウス襲撃事件の全容解説

映画感想・考察


本作のストーリーで最も難解なポイントは、冒頭のオペラハウス襲撃事件である。

ここでは「テロ事件に見せかけたアルゴリズム(プルトニウム241)の争奪戦」が起きている。

しかし、一体ナニが起こっているのかを初見で理解できる者は皆無だろう。映画全体のストーリーと敵・味方勢力の思惑を理解できれば、このパートの全容が見えてくる。

「コレが正解だ!」と断言までは出来ないが、劇中で示される情報を元に整理した。なお独自の解釈や仮説(時には誤解も)を多分に含むので、ご承知おきを。

登場人物と団体勢力

このパートには多くの者達が登場し、なんのための行動をしているか非常に分かりにくい。

各勢力に分けて、それぞれの目的・行動を整理する。

CIA

アメリカの諜報機関。目的はプルトニウム241(実際はアルゴリズム)の入手で、表向きの理由は核兵器の不拡散のために動いている。

主人公:ストーリ冒頭ではCIAに所属していた。ウクライナ警察隊員に扮して、スーツの男の保護とプルトニウム241の入手に動くが、任務外である人命救助も行おうとする。事件中に死亡した扱いになりCAIからは離脱し、TENETで働くことになる。

スーツの男:ウクライナにスパイ潜入。どんな立場になりすましているか明確ではないが、護衛付きVIPルームでロシア将校と同席し「彼ら(ロシア軍)から信頼されている」と豪語する事から、ウクライナ内では、高い身分に就いているのだろう。ロシア将校と何らかの取引をして、ロシア軍の保有するプルトニウム241を入手した。オペラハウスがその取引現場だった。後のフェイの話によると彼は脱出に失敗して死亡。ちなみに彼は、“例のモノ”を普通のバッグに入れてクロークに預けているので、入手したモノが「プルトニウムである事を知らない。」あるいは「プルトニウムと呼ばれているが実は違うことを知っている。」と推察する。

運転手の2人:任務を終えて車へ戻ってきた主人公らを襲撃。プルトニウムの在処を吐かせようと主人公を拷問にかける。敵側の人間と思いきや、実はフェイの指示で動いていた事が後に分かる。

主人公と一緒に運転手に襲われた男:主人公に自殺薬を渡した。彼が拷問を受けるシーンは劇中に無いのため、運転者らと同様に主人公へ適正テストを仕掛ける側の演者だった可能性も考えられる。

CIA内部のTENET

CIAの一員として活動しながら、TENETに属する者。オペラハウス襲撃事件では、人材スカウトを行なっていた。

フェイ:事件後に船上で登場する。彼が運転手2人に指示を出し、主人公を拷問にかけたと説明する。その理由は、TENETへ加入できる人材かテストだった。

襲撃事件中、なぜプルトニウムの入手よりも主人公のスカウトを優先させたか?。という疑問が浮かぶが、それはボス(未来の主人公)が、この事件の結果を事前に知っているからだろう。

TENET

ニール:このパートで登場するTENETの人間は彼のみ。ウクライナ警察隊員に扮して潜入し、主人公を命の危機から助けた。このパートは覆面着用のためニールだと分からないが、バックパックについた赤い紐をヒントに彼だった事が後の展開で判明する。

なぜニールがこの現場にいるのか?。それもボス(未来の主人公)が、この事件の内容を事前に知っていて、ニールに指示をしていたからだろう。

なぜニールは、わざわざ逆行弾を使用したのか?。このシーンにおいては特に意味はない。主人公が逆行弾に興味を持ち、その出所を追うストーリーへ導くキッカケに過ぎない。

テロリスト

彼らが何のためにオペラハウスを襲撃・占拠したのか?。表向きの目的は何も明かされていない。

CIA側の情報によれば「テロ計画は偽装で、CIAスパイを消す事が真の目的」とのこと。つまり、プルトニウム241の取引が行われる事を知っている者が、彼らの背後にいる事が推察できる。つまり、それはセイターと考えるのが妥当だろう。

また、テロリスト達、警察が用いる催涙ガスに対してマスク準備していたので、警察側にもセイターの内通者が居て、情報提供を受けていると推察できる。

ウクライナ警察

表向きはテロの鎮圧に出動しているが、理解し難い行動をする。

まず、出動対応が迅速かつ周到すぎる事から、事前にテロ計画を知っていたと思われる。現場到着後、すぐに催涙ガスを会場中に散布。眠っている会場の客に配慮せず、テロリストを銃撃。テロ制圧後、被害者の客ごと会場爆破して証拠隠滅を図る。

そもそもホンモノの警察かどうかも疑わしい。しかし、あの大人数の全てがニセモノとは思えないので、警察組織内の一部人間の指示によるものと考える。

警察隊とテロリストは互いの動きを予測できているので、両組織の背後に同じ人物が糸を引いていると推察できる。マッチポンプで派手な戦闘を行わせ、その混乱に乗じて秘密裏にプルトニウム241を強奪する事が、この事件の真の目的だろう。つまり、このパートでは未登場であるセイターの関与が疑わしい。

ウクライナ保安庁

各勢力が狙っていたプルトニウム241は、結局どの勢力も回収できず、ウクライナの保安庁に回収された。このシーンは劇中には無いが、後にプリヤの説明で分かる。

プルトニウム241は結局、トラック輸送中に主人公に易々と強奪されてしまう事から、彼らは重要なアイテムだとは認知していないと思われる。

ロシア軍

ロシア軍将校:オペラハウスのVIPルームに居たロシア兵の軍服姿の男。ウクライナ高官になりすました、スーツの男(CIAスパイ)と何らかの取引をして、ロシア軍の保有していたプルトニウム241(アルゴリズム)を持ち出し、スーツの男に供与したと推察する。

あらすじを整理

このパートで起きた展開を箇条書きでまとめた。

展開を理解できている人は、ここは読み飛ばしても構わない。

襲撃事件で起きたこと
  1. オーケストラ公演直前、主人公達(CIAチーム)は現場近くの車内で待機。
  2. スーツの男(潜入中のCIAスパイ)とロシアの軍服を来た男が、VIPルームで観覧。
  3. 武装したテロリストが現れ、会場を占拠。
  4. 即座に大量のウクライナ警察隊が事件鎮圧に駆けつける。
  5. 運転席の二人(ウクライナ人?)に起こされた主人公達(CIAチーム)が、警察隊に扮装し行動開始。
  6. 警察隊はなぜか会場中に催涙ガスを散布。主人公は異変を感じ始める。
  7. 観客達は眠り始める中、テロリストは用意していたガスマスクを装着する。
  8. 警察とテロの交戦が始まると、主人公たちはスーツの男の元へ駆けつけ、身柄を確保。
  9. 主人公がスーツの男に「これは貴方を消す偽装テロ」と告げたあと、“例のモノ”を在処を尋ね、脱出を開始。
  10. 警察隊がなぜか会場に時限爆弾をセット。それを見て戸惑う主人公は警察隊員に怪しまれるが、同じく潜入中のCIA職員に助けられる。
  11. 主人公が、クロークで”例のモノ(プルトニウム241=アルゴリズム)”を確保する。
  12. 集合したCIAチーム。その中の一人はスーツの男と服を交換して、2班に分かれる。主人公とスーツ着用したもう一1名は最初の車に戻り、もう一方はスーツの男と例のモノを連れて下水道から脱出することに。
  13. 警察隊が証拠を消すために会場ごと爆破する狙いに気づく主人公。任務外だが観客を救出しようとする。
  14. 客席にテロと警察隊の姿は消えており、主人公は客席の爆弾を回収を始める。ところが、残っていた警察隊に見つかりピンチに陥るが、覆面の男(ニール)の逆行弾に助けられる。
  15. 主人公達は無事に待機車両に戻った。しかし、運転先の二人に襲われる。
  16. 場所を移動すると、仲間の情報を吐くように拷問を受ける。最後は薬で自死を図る。
  17. 後日に聞いたフェイとプリヤの話によると、別行動した仲間達は死亡。”例のモノ”はウクライナ保安局に回収・管理された。

世界の軍事背景を知ると、より面白い。

未来の科学者は分解したアルゴリズムのパーツを核兵器保有国の軍事施設に隠匿したという設定だ。

この映画の舞台であるウクライナは、1994年に安全保障を引き換えに、保有していた核兵器をロシアへ譲渡した。つまり、争奪戦を繰り広げていた最後のアルゴリズム、ウクライナ国内にあるモノではなく、ロシアから渡ってきたモノであるという事が、このロシア将校の存在によって示唆されている。

ロシアで生まれたセイターが最後に手に入れたアルゴリズムは、ロシアに在ったモノだったという皮肉が、彼の生い立ちや、ロシアという国に興味を抱かせる。核保有国の上層部に入り込む事ができたセイターでも、母国ロシアを相手には上手くいかず、アルゴリズムがロシア国外へ持ち出される機会を狙っていたという事情があったのだろうかと想像してしまう。

本作の制作・公開は、ロシア・ウクライナ戦争以前だ。あと数年遅れていたら、このような背景設定も変わっていただろう。この2国の他にも劇中に登場する米・英・印などの核兵器保有国の歴史・軍事背景を頭に入れて再視聴すると、新たな面白さに気が付く。

全て理解できなくても映画は楽しめる

長々と解説を書いてきたが、このオペラハウス襲撃事件パートを理解できなくても

  • 主人公がTENETに加入するためのプロローグである。
  • なにか(アルゴリズム=プルトニウム241)の争奪戦が行われている。
  • 覆面ニールと逆行弾の登場

という最低限のポイントだけ頭に入れば後の展開も楽しめるので、ここで挫けそうになった人は、気にせず最後まで見て欲しい。

「TENET」に関する別の考察記事はコチラ

コメント

タイトルとURLをコピーしました