タイムトラベルの哲学

コラム

昨年からタイムトラベル系の映画にハマり、矛盾を探したり考察をする事が趣味になった。このジャンルを更に楽しむため、様々な作品のパターンや特徴を考察、定義、分類してみた。主な考察の対象は映画作品だが、参考事例に漫画やアニメ作品も取り扱う。

なお、本記事タイトルはドニー・ダーコからの引用。

タイムトラベルの定義

『タイムトラベル』とは何か?。その意味や内容について、類似する言葉も併せて定義付けた。

タイムトラベル [Time Travel]

  • 何らかの対象物が、何らかの理屈によって、現在から過去または未来の時間へ移動する現象や行為。
  • 直訳すると”時間旅行”だが、本考察では”時間移動”と記す。
  • 狭義には主人公自身が時間移動する物語をタイムトラベル作品というが、他の登場人物や間以外のモノが時間移動する物語についても広義のタイムトラベル作品として、本記事では取り扱う。

タイムリープ [Time Leap]

タイムリープ [Time Leap]

  • 過去や未来へ精神が移動する現象や行為。タイムトラベルの中の一形態。
  • 移動した精神は、移動先の時代に居る自身の肉体へ憑依する。そのため、同じ時間に二人以上の自分が存在することはない。移動可能な時代は、自分が生存している期間のみに限定される。
  • 過去へ戻って”やり直し”や、”調査・謎解き”をする展開の作品が多い。
  • 和製英語で”時をかける少女”が初出らしい

タイムループ [Time Loop]

  • 一定の条件下で、同じ時間・期間を何度も体験する現象や行為。タイムトラベルの中の一形態であり、タイムリープの設定や条件を、さらに限定的にしたモノと言える。
  • タイムリミット経過や、本人死亡などによって、振り出し時点に戻される。
  • 無限に繰り返される状況からの脱出を目的とする展開の作品が多い。

類似する言葉

タイムスリップ [Time Slip]

  • 一般的には”タイムトラベル”と同義に使われる事が多いが、”スリップ=滑る、誤る”という言葉のイメージから「偶発的に発生した」「巻き込まれた」という意味合いを含んで使われる場合もある。
  • 本考察は、この言葉を基本的に使用しない。

タイムワープ [Time Warp]

  • 一般的には”タイムトラベル”と同義に使われる事が多いが、”ワープ”という言葉のイメージから「時空の歪みを発生させて時間移動した」という科学的な理屈を強調するために使われる場合もある。
  • 本考察は、この言葉を基本的に使用しない。

関連する言葉

タイムライン [Time line]

  • 1つの世界のおける時間の流れや歴史、時系列などのことを指す。
  • タイムトラベルによって過去の事象や未来の可能性を変えた場合、タイムラインが変更、分岐することがある。
  • 本記事では「時間軸」と記す場合がある。
  • 一般的に「世界線」とも呼ばれることもあるが、本記事では基本的に使用しない。

タイムリープタイムループは、タイムトラベルの中の一形態であるが、作品ジャンルを語る上では、この3つに大別する。

時間移動する対象物 [Object]

物語の中では様々なモノが時空を移動する。それらの対象物を3つに大別した。

物体 [Body]

  • 形や質量を有する物体が移動する。
  • 人間や他の生物
  • 衣服、道具、などの装着品や周辺物
  • 乗物、建物、周囲の空間全体、などの大きいサイズの物
作品例

精神 [Spilit]

  • タイプリープ作品”やタイムループ作品は、このパターンが多い。
  • 対象者の精神(意識)のみが移動する。
  • 移動した精神は、移動先の時代の対象者自身の肉体へ憑依するケースが多い。
  • 他者(祖先や子孫などの血縁者、あるいは赤の他人)の肉体へ憑依したり、肉体を持たず幽体のような存在となるケースもある。
タイムリープ作品例
タイムループ作品例
  • オール・ユー・ニード・イズ・キル(何度殺されても蘇る)
  • 恋はデジャ・ブ(同じ1日を無限の繰り返す)
  • ドニー・ダーコ(世界崩壊を阻止して、時間を巻き戻す)
  • ミッション8ミニッツ(正確にはタイムループではない。仮想空間に造られた過去の世界へ何度も潜入する設定のため、実時間は巻き戻っていない。)

情報 [Information]

  • 情報だけが移動(伝達)する。情報の内容は音声や映像など様々。
  • 送信型:主人公側が別の時代へ送信し、相手側を助けるケースが多い。
  • 受信型:主人公側が受信した情報をヒントに、問題解決や危機回避する展開ケースが多い。
  • 双方向型:会話するケースが多い。
作品例
  • 送信型:インターステラー(”事象の地平線”で得た観測情報を5次元人の力を借りて過去の娘へ送信)
  • 受信型:デッドゾーン(サイコメトリー能力で未来の事象を予知)
  • 双方向型:オーロラの彼方へ(無線機で過去の父親と会話)

タイムトラベルの理屈 [theory]

どのような方法または原因によって時間移動を可能にするのか?。4つに大別した。

科学技術 [technology]

  • 時間移動を可能にする機械装置(=タイムマシンと呼ばれるモノ)を使用する。
  • 移動対象物は”物体”である事が多い。
  • 現代または近未来の人類によって発明・製造された装置を用いる。
  • 異星人、超古代文明、遥か遠い未来の人類など、別の文明が有する人類未知の科学力を利用する場合もある。
作品例

超能力 [psychic]

  • 登場人物固有な超能力を用いて、時間移動する。
  • 先天的能力:親や先祖から遺伝、突然変異、など
  • 後天的能力:自ら修得、他者から授かる、など
作品例

人智を超えた未知の力 [supernatural]

  • 作品独自の設定や、未知の物理法則によって時間移動する。
  • 偶発的に生じた時空の歪みに巻き込まれるケースが多い。
  • 自身や雷などの災害級の巨大エネルギーが原因となるケースがある。
作品例

不明 [unknown]

  • 時間移動した理屈について作品内で全く言及がない。
  • あるいは調査・推測しても解明できない。
  • 無自覚の超能力や、神のような超越した存在を仄めかすケースもある。
作品例

タイムマシンの形状 [machine shape]

タイムマシンは様々なデザインで物語に登場する。それらの形状を3つに大別した。

据置型 [stationary]

  • 施設内に固定された大型の装置。
  • 運搬や移設は簡単には出来ない。
  • 装置に納めた人やモノを転送する。
  • 実質的に時間移動は一方通行となるため、元の時代へ戻れないケースが多い。
作品例

携帯型 [portable]

  • 小型で簡単に持ち運びが可能。
  • どの場所からでも時間移動できる。
  • 便利で手軽過ぎるせいか登場する作品は少ない。
作品例

乗物型 [piloted]

  • 交通手段にも利用できるので便利。
  • やや大型のため、保管や格納に難あり。
  • デロリアンは余りにも有名で、タイムマシンの代名詞と言える存在。
作品例

タイムトラベルの制限 [restriction]

もしもタイムトラベルが出来れば過去をやり直す事ができる。しかし、それが簡単に出来てしまうと物語の面白みは損なわれる。そのため、タイムトラベルを自由に何回も繰り返せないような制限を設定に加えるケースが多い。

エネルギー不足

タイムマシンの動力となるエネルギーを容易に準備できないため、タイムトラベルを実行できない。その理由は下記のケースが多い。

  • 時間不足:エネルギーをチャージするために長い時間を要する。
  • 資金不足:エネルギーを購入するお金が不足している。
  • 希少性:エネルギーとなる材料が希少な物質、あるいは一般に流通していないため入手が困難。

身体へのダメージ

タイムトラベルを経験すると身体へダメージを被るため、何度も実行する事ができない。

主に脳へ負担がかかるケースが多く、精神疾患や脳機能低下のリスクが高まり、生命の危機に及ぶ場合もある。

法規制

タイムトラベルは違法行為として禁止されており、違反すると逮捕・処罰される。

主人公だけは大目に見逃してもらえるケースが多い。

作品例

自主規制

個人的な信条や身辺事情によってタイムトラベルを控えている。

戒めを破ると、碌な結果にならないケースが多い。

作品例

アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜(自分の子供が誕生する以前へのタイムリープは自粛)

物語の展開と目的 [plot]

タイムトラベルを扱った作品はとても多いが、物語の展開と目的は3つのパターンに大別できる。

解決 [solve]

  • ある問題を解決することが目的で、その手段として時間移動をする。
  • 問題の内容は、個人的な事情から世界規模の危機まで多種多様。
  • タイムリープ作品は殆ど、この型に該当する。
作品例

帰還 [return]

  • 時間移動した先から、元の時代へ帰る事を目的に行動する。
  • 意図せずに時間移動したケースが多い。
  • 結局、帰れないケースもある。
  • タイムループ作品は、無限ループ(=問題)から脱出(=解決)を目的とするので”解決型“に見えるが、過去(振出し時点)へ戻る現象は主人公の意思では無く、主人公はループ脱出(=日常に帰ること)を目的に奔走するので、”帰還型“に類する
作品例
  • 恋はデジャ・ブ(ループする毎日から抜け出したい:現在->未来)
  • 漂流教室(現在へ帰りたい。しかし最後は諦める:現在->未来)

適応 [adapt]

  • 時間移動した先の環境で生存・生活する事を目的とし、徐々に適応してゆく。
  • 意図せずに時間移動したケースが多い。
  • 適応と帰還の両輪で話が進むケースもある。
  • コールドスリープ系の作品も広義に該当する。現代文明に驚きながらも馴染んでゆく様子や郷愁の念などが描かれる。
作品例
  • 侍タイムスリッパー(幕末から来た侍が、現代で俳優になる:過去->未来)
  • 漂流教室(現代の小学生達が、荒廃した未来でサバイバル:現在->未来)
  • スローターハウス5(自分の人生のとある時点をランダムに俯瞰:過去<->現在<->未来)

時間移動が及ぼす因果の道理 [karma]

“因果”とは”原因”と”結果”のことで、何事にも原因があり、それが結果へ繋がる。タイムトラベルによって過去へ遡ることで、原因となる出来事を変えたり消したりする事が可能だ。そうした場合、現在や未来へ、どのような影響を及ぼすかのか?。この疑問と概念については、もちろん正解は無い。これも作品ごとに多様で複雑なのだが、大きくは5つに分類できる。

不変 [can’t change]

  • 原因(過去)を変えることが出来ない。即ち結果(現在/未来)も変わらない。
  • 過去の出来事へ干渉しようとすると、何らかの理由により阻止されてしまう。
  • 因果を変える事は不可能とする概念。
  • 現代/未来が変わらないため、矛盾は生じ難い。
作品例

分岐 [branched]

  • 原因を変えると、複数の結果(現在/未来)に分岐する。
  • 過去の出来事へ干渉すると、元の世界から分岐した異なる世界が発生し、新たな可能性の未来へ進行する。
  • 元の世界の現在・未来は、影響が及ばない。
  • いわゆる「パラレルワールド」や「マルチバース」と呼ばれる概念。
  • 矛盾が生じ難く解決し易い。
  • 量子力学やマーヴェル作品の普及のせいか、近年はこのケースが増えている気がする。
作品例

影響 [affected]

  • 原因(過去)を変えると、結果(現在/未来)が変わる。
  • 過去の出来事へ干渉すると、その後に続く出来事へ影響を及ぼし、現在・未来の状態(環境・歴史・記憶など)が変更・上書きされる。
  • 世界は唯一で、並行世界などは存在しない。
  • タイムトラベル界隈では有名な「バタフライ効果」と呼ばれる概念。
  • 矛盾が生じ易く解決し難いが、タイムトラベル作品の醍醐味を最も楽しめる設定である。
作品例

復元 [restored]

  • 原因(過去)を変えても、同じ結果(現在/未来)が起きる。
  • 原因を除去しても、異なる原因によって同じ結果へ辿り着く。
  • 因果の過程を阻止をしても、異なる道筋から同じ結果に辿りつく。
  • 人間が手を加えようとも世界が自己復元するという概念。
  • 矛盾は生じ難い。
  • 主人公は過去改変は諦めて、未来に目を向ける展開が多い。
作品例
  • ターミネーター・シリーズ(”審判の日”は形を変えて訪れる)
  • タイムマシン[2002](恋人が死ぬ運命は免れない)

既決 [predestined]

  • 原因(過去)を変えると結果(現在/未来)は変わるが、それは過程の一部分に過ぎず、最終的には唯一不変の結果へ辿り着く。あるいは永遠に繰り返す。
  • 時間移動も歴史変更も全て、予定された必然の出来事とする概念。
  • 矛盾は生じるが、宇宙規模の巨視的概念で捉えれば、”些細なバグ”程度に扱われる。
  • “循環思想”(卵が先か、鶏が先か)や”宿命論”などを盛り込んだ哲学性の強い作品に多い
作品例

親殺しのパラドクスを例にした因果の道理 [example]

上述の因果の道理について『親殺しのパラドクス』を題材にして、各パターンの考え方や解決法を例に挙げる。

問)自分が産まれた以前の時代へ遡り、母親になる予定の人物を殺した場合、どのような事態が起きるのか?

不変 [can’t change]

何らかの理由によって殺害計画が失敗する。

  • 母を護衛する者が現れて計画の邪魔をされる。凶器の銃や爆弾が故障して作動しない。などの障害が続いた結果、殺害を諦めて現代へ帰る。
  • 殺害後に現代へ帰還したが、実はまだ生きていた。あるいは別人を越していた。

分岐 [branched]

自分が誕生しない、もう一つの世界が生まれる。

  • 元に居た現在世界(A)は、何も変わらない。
  • 新たに派生した世界(B)では、自分は誕生しない。
  • もしも世界(A)に戻れなければ、存在の痕跡すらない世界(B)で生き続ける事になる。

影響 [affected]

自分が誕生しなかった歴史へ世界が変更・上書きされる。

  • 自分自身の存在(肉体と精神)が消滅する。
  • または別の人間や生物に変化してしまう。
  • 消滅する前に、矛盾解消のために歴史の再修正へ行動を移す。
  • 母を殺す⇨自分は誕生しない⇨母を殺す者は誕生しない⇨母を殺せない。という矛盾は解消できない。

復元 [restored]

別の母親から誕生する歴史へ世界が変更・上書きされる。

  • 母親(原因・経路)が変わっても、自分が誕生すること(結果)には変わらない。

既決 [predestined]

矛盾は放置したまま世界は変わらず継続する。

  1. 歴史は上書きされ、自分はこの世界には存在するはずのない人間として生き続ける。
  2. あるいは、自分は世界から完全に消滅。母親を殺した者は正体不明の人間の犯行とされる。
  3. 本来の歴史では母親は若い頃に何者かに殺されるはずだった。しかし、何者かの干渉によって歴史は改変され、生き延びて自分を産んだ。本来は産まれない存在である自分自身のの手で若い母親を殺すことにより歴史の修正を果たす結果となる。などの複雑な話へ発展する。

終わりに

この記事はタイムトラベル作品について、私なりの解釈や考察を纏めたものです。世間一般と比べて誤った認識をしている事があるかもしれませんので、その点はご理解ください。まだまだ観たい作品は沢山あります。それらの作品を見て考え方を改めたら、この記事の内容も更新するかもしれません。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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