★★★☆☆ 2024 アメリカ 監督:コラリー・ファルジャ 出演:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド
あらすじ
50歳を超え、容姿の衰えにより仕事を失った元人気女優・エリザベスは、新しい再生医療・サブスタンスに手を出す。薬を接種するとエリザベスの背を破り、若く美しい肉体が現れる。抜群のルックスとエリザベスの経験を持つ“スー”は、一気にスターとなるが…。
感想
デミ・ムーア…すげぇ(‘口‘;)。
ルッキズムだとか、男性社会構造だとか、そんな話はどうでもいい。
年老いても、なお羨望と称賛を欲する大女優の気骨を楽しめた。
強烈なインパクトを与える”怪作”だが、”面白い”とは言い難い。
ほぼ『笑ゥせぇるすまん』
喪黒福造こそ登場しないが、「心のスキマ、お埋めします」という声が聞こえんばかりの序盤を見れば、後の展開は容易に思い付く。そして、その予想は最後まで1mmも外れない。
欲望に抗えず忠告を無視した結果、最後にドーンッ!☝️と大きな報いを受けるが、ラストシーンのあの姿までも既視感を覚えた。

ストーリーはとてもシンプルで凡庸だが、刺激の強い映像が続くので、最後まで飽きる事はない。そして主演のデミ・ムーアが、本作を稀有な”怪作”へ昇華させている。
鏡に向かうデミ・ムーア
黄色いコート、ピンクのレオタード、真っ白なバスルーム、など、ビビッドな配色を用いた映像が特徴的。これは過美な毒々しさを感じさせると共に、老いて色褪せてゆくエリザベスの姿を強調する効果もある。このコントラストは、ストーリーが進むにつれて強くなる。
そして、エリザベスが鏡を見つめるシーンが作中に何度も登場する。美への執着、老いへ恐怖と絶望、そして内面の醜さを表わしているのだが、デミ・ムーアの姿が痛々しくて、映画前半は観ているのが辛い。心を疼かせる彼女の芝居には畏敬の念を抱いた。
しかし、後半からエリザベスの姿が醜い老婆やバケモノへ姿が変わると、途端に退屈な映画になる。それは勿論、”リアルなデミ・ムーア”が画面から退場したからだ。

※↑初期形態が最も怖いw
デミ・ムーアの経歴を知っている者ならば、この役と彼女自身がオーバーラップするだろう。これまで坊主やヌードにスキャンダル、数々の話題を提供してきたデミ・ムーア。彼女は本作で”最後のカード”を切った。
自虐的に醜い部分を晒す事によって、この年齢で再び女優としての栄誉を手に入れた。もう更なる奥の手は無いだろうが、ひょっとして彼女なら、また何かやってくれそうかと期待してしまう。
ポリコレへの皮肉
本作の感想や口コミを調べると、「男性社会における女性の立場が…」とか「ルッキズムが…」とか、社会背景を切り口に語っている意見が多い。確かに、そのような考察をさせるよう作られているが、むしろ本作はそのような思想を遠回りに否定しているように感じた。
本作はボディ・ホラー(肉体変容の恐怖)に類するようだが、サイコ・ホラーの側面が強い。ところが終盤になると突然、陳腐なスプラッター映画へ変容する。この急激なジャンル転換によって、私はかなり興醒めした。しかし、これは意図した演出と捉えた。
現代の鬱陶しいポリコレ思想に染まった自称意識高い系の視聴者の興奮と考察を高めた挙句、最後に思い切り冷や水を浴びせるのだ。それは劇中の、若く美しいスーの姿を観に来たはずなのに、醜いバケモノの血飛沫を浴びせられる観客とリンクする。
往年のホラー映画ファンを喜ばせる描写は「ホラーはグロくて低俗なのが面白いんだよ!」という主張を感じた。
美醜への生理的な欲求
若いスーの姿は、男のスケベ心を煽るような存在として描かれる。それ故に初めは居心地の悪さを感じた。
ところが、上述の通りデミ・ムーアの芝居によってエリザベスを見るのが辛くなってくると、いつの間にか「スーの方を見ていたい」という気持ちに変わっていた。
醜いモノから目を逸らし、美しいモノの方に注目してしまう。これが人間の本能なのだろうか?。視聴者である私も、主人公の二人と同じ気持ちを抱いている事に驚かされた。
しかしながら、美と若さに執着するエリザベスに同情の念は抱けない。
彼女は無知な若者ではなく、50を過ぎた大人だ。せっかく人生をやり直す大きな好機に恵まれても、以前と全く同じ生き方を選ぶことに、精神性の低さを感じてしまった。それもショービジネス界で生き続けた弊害かもしれないが。
私も、もっと老けた時には彼女の気持ちに共感できるかもしれない。取り急ぎは、SNSにオススメ表示されるオッパイ女の写真を、ついつい見てしまう行為を戒めようと思った。
美醜への執着を扱った他の作品
『笑ゥせぇるすまん』を例えに出したが、もう1つ思い浮かんだ漫画作品がある。それは楳図かずおの『洗礼』。
- 主人公は引退した元人気女優。
- 若さと美しさを取り戻すため、自分の娘の身体を乗っ取る。
- 医学的なエグい手段で入れ替わる。
- 久々の若さを謳歌するが、長くは続かず破綻する。
登場人物やプロットに似通った要素が多い。久々に読み返そうと思った。
あとは、昔の金曜ロードショーでよく放映された「永遠に美しく…」。これもサブスクを漁ってみよう。


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