ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

映画感想・考察

★★★★★ 2003 アメリカ 監督:アラン・パーカー 出演:ケヴィン・スペイシー、ケイト・ウィンスレット、ローラ・リニー

あらすじ

雑誌記者・ビッツィーは死刑囚のデビッド・ゲイルに指名され、死刑執行前の3日間で彼のインタビューを行うことになる。彼はレイプ事件で大学教授の職を追われた後、殺人の罪で死刑を宣告されていた。しかし、ビッツィーは彼が無罪ではないかと思い始め…。

主人公と主演俳優のキャリアが重なる

私の好きな俳優ケヴィン・スペイシー。彼の主演作の中では最も思い入れの強い作品。

レイプ事件の冤罪で社会的制裁を受けるこの映画の主人公は、後年のケヴィン・スペイシー自身に降りかかった悲劇と強く重なる。複数の裁判で全て勝訴し無罪を得たが、失ったものは余りにも大きい。今年は久々の主演作が公開予定のようなので、今後の活躍を強く期待している。

エリート中年の転落劇

映画は硬めの社会派ドラマ。いきなりネタバレするが、死刑反対運動をしていた主人公デビッドは、仲間の女性活動家の殺人容疑で死刑を処される。ところがそれは冤罪で、死刑執行後に無実の証拠となる録画テープが公開されることになり、死刑賛成派の活動家や社会に対して命をかけた強烈な皮肉をお見舞いする。

ドンデン返し系映画と紹介される事もあり衝撃的な内容ではあるが、タイトル通り「デビッド・ゲイル」という哀れな男の人生を見せる作品だ。悲哀だらけの情けないオヤジを演じさせたらケヴィンの右に出る物は居ない。

大学の女子生徒にレイプの冤罪をかけられた結果、知的でプライドも高い主人公がアルコールに溺れて、仕事も家族も失う。真っ逆様に人生を転がり落ちていく様は、本当に気の毒で見てられない。

同じ中年男性である私も一歩間違えれば、あの主人公のようになってしまう脆い人間なのでは?、という恐ろしさを感じる。

プライドとリベラル思想を拗らせた末の捻くれた復讐

現代のX(旧Twitter)で、大炎上して袋叩きにされるリベラル言論人をよく見かける。主人公デビッドは、そういうタイプの男だ。前半の活動家時代の言動には、強いナルシズムを感じる。

そんな彼が最後に果たした文字通り命がけの抗議は、社会に対して死刑制度について問題提起したように見えるが、私は違うと思う。

人生の全てを失い、いわゆる”無敵の人”になったことで「世間に一泡拭かせてやろう」という私怨が大きな動機だ。しかも安直な復讐方法は選ばず、あたかも崇高な思想に殉じたかのように画策した。ナルシズムの強い彼らしいやり方だ。

処刑後、デヴィッドから二人の人物へ郵送物が届く。この2つが対照的で面白い。

1つは、自身を取材した記者へビデオテープ。この録画内容で一連の殺人事件は”希望を失った二人の心中であり復讐”だった事が分かる。ビデオに添えられた手紙に「David wanted you to have this. he said it would be the key to your freedom.」と書いてある。”これが貴方の自由への鍵になるだろう”という意味の通り、死刑を止められなかった事を後悔しているであろう記者を慮って、自分の死刑は計画的だった事を伝えたのだろう。

もう1つは元妻へ、レイプ事件の無罪の証拠と大金が届く。これは自分の子供へ経済的援助と無罪だった事を伝えて欲しいという事だろうが、自分を信じず一方的に子供を連れて出て行った妻に罪の意識を植え付けるための復讐も兼ねていると、私は捉えた。もう一方の”自由への鍵”とは真逆の贈り物だ。この皮肉な復讐方法が実に主人公らしい。

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